Tips & Bugs(雑記帳)
9. 16番雑感(97/11/8)
1/80の16.5mmゲージの線路の上を走る日本型の模型を何と呼ぶかは古くて新しい問題でいつまでも解決しない問題のようです。
一時期TMSが製品の紹介欄で、「1/80の16.5mmゲージ日本型」をHOと記載していたようですが、一部の読者の執拗な異議申し立てのためかどうかはわかりませんが、また「1/80 16.5mm」というスケール・ゲージ併記に戻っています。またつい先日某Nパソコン通信の鉄道模型会議室で、「1/80の16.5mmゲージ日本型」をHOと呼ぶべきかどうかという一連の議論がおこりましたが、結局話がかみ合わないまま立ち消えになったようです。
「1/80の16.5mmゲージ日本型をHOと呼ぶ」と言うヒトタチの主張は、1.プラ製品を大量に生産しているK社やT社がHOゲージと呼んでいて、実際模型店でも「HO」といわないと「16番」といっても理解してもらえない、2.長い間巷では、1/80の16.5mmゲージ日本型はHOと呼ばれてきたので、たとえそれが正確でないにしてもひとつの文化だからいまさら否定できない、3.Oゲージでも複数の縮尺があり、HOゲージでも、1/80と1/87の10%ぐらいの縮尺の違いなら問題にするにはあたらない、ということのようです。
私は自分で「1/80の16.5mmゲージ日本型」を「エッチオー」と呼ぼうとはおもいませんが、まあいわゆる「エッチオー」と呼ばれるのは許容しようという立場です。ただ「1/80の16.5mmゲージ日本型はHOである」という考えは許容できません。その理由は、1.敢えて何事につけても国際化を要求されている時代に、模型の世界にまで日本でしか通用しないJAPANESE STANDARDを持ち込む必要があるのか、2.また本当の意味でのHOスケール1/87で日本型をつくっている人達の立場をどう考えるのかということになります。特に3'6"(1067mm)の車両をHO(3.5mm) scaleでつくる場合は、HOjとかHOn3 1/2と表記すればいいとしても、1435mmの車両をHO-scaleでつくる場合はどうなるねん?といいたくなります。これらの人は現時点では少数派であるにしても、製品としてもかつてのPIMの近鉄ビスタカーや最近では乗工社の京浜急行の電車が出ていますし、1/80のモデルとひとからげにしてしまうことには大きな疑問を感じます。広く世間でそういわれているからそれでいいという考え方が、下手をすると「少数派を圧殺する」という立場に変わり、不幸な結末を招くことが多いのは、世界の歴史をみれば明らかでしょう。まあ「1/80の16.5mmゲージ日本型はHOである」ことがそこまで大げさなことになったり、「悪貨は良貨を駆逐する」実例だとまで主張するつもりはありませんが・・・
それから「とれいん」誌が提唱している「Jゲージ」という呼び名が、「1/80の16.5mmゲージ日本型」のみをさすのに対し、16番は「1/87の欧米型から1/76の英国型を含み、16.5mmの線路を走る日本型は、原則的に1/80でつくる」という規格で、「1/80の16.5mmゲージ日本型」のみを指しているわけではありません。ですから昔はモーターなどの部品の制約があったにしても、小型車両やナローの車両をオーバースケールでつくって16.5mmゲージの線路を走らすこともよくおこなわれていたわけです。製品でもカツミの弁慶やツボミの木曾森などがあります。またHOやOOでは、ナローはナローとして狭い線路の上を走らせることになっており、縮尺と軌間がだいたい一致しています。それに対して16番は3'6"(1067mm)と1435mmの車両はおろか、ナローの車両までデフォルメして走らせてしまおうというゲージで発想が全く異なっています。現在、ナローの車両を1/80で16.5mmゲージの線路を走らそうというひとはいないと思いますが、JRも京急や近鉄もみんな同じ16.5mmゲージの線路で走らせようという人が大半ではないかと思います。
いささか話が脱線しましたが、私はこのゲージを生み出した山崎喜陽氏に敬意を表して、「1/80の16.5mmゲージ日本型」は「エッチオー」ではなく、「16番」と呼んでいきたいと思っています。