Tips & Bugs(雑記帳)

19. どこまで分解できるか? (98/5/3)



子供の頃覚えた機械いじりの楽しみっていうのが、模型へのイントロダクションであったという幼児体験?をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

とにかくねじ穴があればドライバーを当てて分解してみる、元に戻そうとしてもうまく組みあがらない、組み立てられたと思ったら部品がいくつか余ってしまった。そんな楽しい思い出がよみがえってきます。

ところが昨年からPL法なるモノが施行され、これの対策のためだんだん機械が分解できないようになってきているようです。たとえば勤務先に入っているレーザープリンターですが、途中で紙詰まりを起こしてしまうと、場所によっては分解不能なのでこちらで処置できず、メーカー工場送りにしなければならないことがしばしばあります。以前の製品ならかなりのところまで分解できたので、自分のところやメーカーの出張サービスマンで対処可能であったのです。

模型の世界にPL法の余波が及んだわけでもないのでしょうが、ムサシノモデルの10型蒸機は、動輪を台枠から抜くことができずに弱りました。結局ブレーキロッドをむしり取って動輪を抜きましたが、ブレーキロッドは組立の最終段階で接着剤づけして別塗装となっているようで、ユーザーによる分解を全く配慮していない設計のようでした。またフライシュマンのT3も動輪がフレームに打ち込みになっていて動輪を台枠からはずすことができません。またボイラー内に充填されたウェイトもはずすことができません。これはTMSに載ったある方の加工改造記事を見て、改造ネタに購入したのですが、この構造では改造が非常に難しいと思いました。ちなみに作者にお問い合わせしたところ、台枠は車輪ごと溶剤につけて洗浄して、筆塗りで塗装されたとのことでした。上まわりはウェイトごと切断加工されたとのことです。

コストや安全性のことを考えると、完成品では分解の必要は無いのかもしれませんが、メンテナンスや改造加工のことを考えるとやはり分解可能な構造にしてほしいと思います。



上記のプリンターが分解できないのはPL法対策という話を書いたら、パソコン周辺機器メーカーでプリンター関係の仕事をされている方から次のようなメールをいただきました。 (98/5/7)


最近のプリンタの分解可能な場所が減っているのは、PL 法関係というよりもコスト削減が主な理由のはずです。組み立て工程の中で、ネジ締めというのは非常にコストがかかる (とくにいろいろな方向からの場合) ので、どこのメーカもこれを減らすことにしゃかりきになっています。もちろん、その結果一部が破損してもそれよりも大きな単位での交換となるので省資源との見合いになることも多いですが、基本的には「それぞれの交換不能なサブユニットの耐久性を均質にする」ことで、一部が消耗した場合はほぼ全体も寿命になるような設計がうまい設計ということになっているのです。この辺は別に会社でのノウハウというより「日経メカニカル」のような技術雑誌では良く取り上げられる話題です。

「ネジを減らす」ことの他に「一方向からの組み付け」が良く使われます。極端になると、どんどん部品を上に積んでいって、最後に何かバインダ (これもネジでないことが多い) で止めて終わりというのが理想なのです。これだと、組み立てる時にモノを色々な方向に動かさなくてすみますから。


ここからは私の意見です。

模型の場合だと、コストよりもひとつひとつ部品を確実に組み付けられた方がいいので、ねじ止めが多用されるのとはこういう製品では逆なんだと驚きました。むしろどんどん部品を上に積んでいって、最後に何かバインダ で止めて終わりというような日本で作られるプラスティック製Nゲージの完成品に見られるような組立法は「知恵の輪遊びのような」といって嫌われるわけですね。動輪が抜けない模型もコストダウンの結果なのでしょうが、僅かなコストの見返りに大きな楽しみを奪われたような気がします。完成品コレクターの人にとっては問題ないのでしょうが、分解加工派にとっては大きな不満です。

さらに伝統的な構造の模型の場合は、一部の消耗部品を交換することにより半永久的に使えるような楽しみもありますから、これらの工業製品とは設計の思想がまったく違うわけですね。Nゲージ完成品あたりは、そのあたりこれらの工業製品に近いといえるのかもしれません。

でもやはり分解の妙味が、機械いじりの楽しみの原点だと私は思います。その意味でも高価なブラス製品のみでも伝統的な?構造の模型であって欲しいと思います。


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