下まわりの製作
■サイドロッド
鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済

 まずサイドロッド(図1、材料は1ミリ厚洋白板)からつくりはじめます。ケガキや孔開けに自信のない場合には、左右2枚をハンダで張り合わせて孔あけ加工されることをお勧めします。仮にロッド孔の間隔が本来の設計寸法より少しずれたとしても、左右サイドロッドの孔間隔のずれがないほうがいいからです。なおロッド孔は、ロッドピンの直径より0.1ミリ太い1.6ミリドリルで開けます。なおこのようなロッド類は外形を切り抜いてから、穴を開けるのではなく、まず穴を仕上げてから、それにあわせて外形を仕上げるようにします

鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済

 なおロッドの孔を開けるときは、いきなり1.6ミリのドリルで開けるのではなく、まず0.8ミリぐらいのドリルで下穴を開けて、二本の真鍮線を差し込んで孔間隔が正確に出ているのを確認(上図)してから、1.6ミリドリルで開けます。
鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済
もし下孔の段階で間隔が狂っているときには、今野さんが書かれている(上図)方法で修正を試みてください。

鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済
サイドロッドは、本格的には第二動輪直後の関節にピンを入れるのですが、簡略化したい方や正確な孔あけに自信のない方は市販キットによく見られるような、第二動輪のロッド孔で重ね合わせるようにして、関節はダミーにする方法でもかまいません。私はサイドロッド関節のピンには六角頭の1ミリビスをニッケルメッキしてから利用していますが、適当な小ネジやカシメピンなどが、手に入らなければ上図のように洋白線でカシメてもいいと思います。強くハンマーで叩いて、カシメすぎないように注意してください。また第一動輪と第三動輪のピン穴は、ロッドピンを埋め込むように2.1ミリドリルで皿もみしておきます。

■フレーム
 フレームは、下図のものを1ミリ厚真鍮板から切り出しますが、今回は模型店でよく売られている10ミリ幅の帯材が利用できるように設計しておきました。なおこういう厚板の帯材を利用するときには、シャーリングで切るとき捻れがでているのが普通ですから、まずその歪みを直しておきます。そしてフレームも二枚張り合わせて加工した方が正確に出来ます。

 別府鉄道の姿にしたい方は、台枠や床板の寸法を図面にあわせて変更してください。動輪のはまるペデスタルは、まずサイドロッドのロッド孔の間隔をノギスで正確に測定してからそれにあわせて、加工します。ロッドの孔開けに多少誤差があっても、フレームの加工段階でそれを吸収・修正することが可能だということです。このようにしてペデスタルを仕上げますが、この段階ではペデスタルには軸箱が堅くはまるぐらいに仕上げておきます。



加工してバラキット状態になった下まわり

 切削加工の終わったフレームは市販の挽物スペーサーで組み上げます。私の使用したアダチ製品は、ビスで固定するようになっているので、まず仮組してサイドロッドのついた動輪をはめて、ペデスタルを少しづつやすりながら調整して、動輪がひっかかりなく回るようにしてから半田を流して固定します。この時には定盤かガラス板の上で組み上げて、フレームが捻れないようにします。なお、挽物のスペーサーを入手できないときは、直角ジグを使って板材から組み上げることになります。フレームには横梁(サイドタンク支え)を入れると下回りが引き締まりますが、これは省略してもよいと思います(図6)。
 また今回は3点支持のイコライザー可動式にしてみました。よくイコライザー可動式は、バネ可動式や固定式に比べて難しいといわれます。しかし設計では多少経験が必要ですが、実際の工作や調整では難しくはないように思いますので、挑戦してみてください。なお幸いにも今回使用するエコ−製動輪には、第一動輪にカラーが組み込まれていますので、同社のキットの方式に準じたイコライザーを入れて三点支持となるように設計しました(図7)。なお私の作例では、PFM方式のサウンドに対応するため第三動輪にコンタクト(サカツウ製を旋盤で小さく削ったもの)を入れてあります。

 フレームを組み上げた時点で、サイドロッド動輪をはめて、軸箱が軽く動き、動輪が軽く回転するようにペデスタルを仕上げます。なお本作例ではフレーム外幅が12ミリであるため軸箱が左右に動きすぎます。それを防止するために、軸箱と車輪の間にΩ型に加工したワッシャを入れるか、軸箱のペデスタルの部分にには0.4ミリ径真鍮線から作ったコの字形のスペーサーをはめておきます。
■床板

 なお床板はシリンダーブロックのパーツを利用するため、2分割となるような構成で設計しました(図8)。床板の下板は0.5ミリ厚真鍮板から図9のように切り出して加工します。前部床板は0.2ミリ厚洋白板から切り出したランボードにハンダづけし、1ミリ角線から加工した縁取りをつけておきます。また加工した後部床板は、ガイドヨークや横梁を先につけてからフレームと半田付けします。
■動力装置
ギアボックスは、エコ−の動輪に付属してきたものをそのまま組み立てて使用しますが、後部で支持するための腕を追加加工します。モーターはマシマの小型モーターを使うように設計しておきましたが、他のキドマイティーやNゲージ用などのモーターでも代用できます。ただその場合は取付ネジの位置や規格が違うので取り付け用アダプターを自作する必要が生じることもあります。

■メインロッド
 メインロッドも1ミリ厚洋白板から切り出し、クロスヘッド(E1774)に1ミリネジか小ピンで取り付けます。なおクロスヘッドの裏には抜け止めの洋白板の小片を貼っておきます。ワルシャート式のバルブギアを付ける方は、クロスヘッドに腕(E2770)をつけておきます(図10)。

鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済
 なお作例では実物どうりワルシャート式のバルブギアーを装備していますが、パーツを利用してもかなり繊細な工作が要求されますので、簡略化して早く完成させたい方や細かい工作に自信のない方は省略して、形態のシンプルなスティーブンソン式のバルブギアーをもつということにしてもよいと思います。その場合は第二動輪のクランクピンを自作する必要があります。今回使用したエコ−製の動輪は、クランクピンは1.2ミリネジと特殊な規格となっていますが、これはHOのパンタ用ネジと同じ規格なので、図11のようにパンタ用ネジと真鍮パイプから加工してください。


■シリンダーブロック
 シリンダーブロック(E2760)は、1ミリ厚真鍮板から加工した取付板で左右をつなぎパイプでかしめてから、前後蓋などのパーツ(E2763,2765)を使用して組み上げます(図12)が、前後蓋などは組み立て前に孔開け加工をして、バリをとって仕上げておきます。またスライドバーは、1ミリ厚洋白板から切り出すか、1ミリの洋白角線から加工します。
鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済

動輪押さえ板は0.5ミリ真鍮板から加工し、ブレーキシュー(E1775)とテコ(E2775)を取り付けます。なおこのブレーキテコセットには、一見同じように見えますが第2動輪用と第3動輪用でわずかに形が違っていますので注意してください。後方へのロッド取付部が平行になっているのが第3動輪用です。

 ブレーキシュ−は,、エコ−のパーツを利用せず真鍮線から簡略化した取付座を作って取り付けることも出来ます。
鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済
鉄道模型趣味2001年6月号・通巻683号 より転載 機芸出版社了承済
キャブ下のブレーキ関係は自作したテコとパーツを使って上図のように加工します。


フレームの前後に付く排障器はパーツ(E1776)を小さく削りなおして使用するか、自作します。またキャブ下ステップ(E1796)を後部床板にハンダ付けしておきます。
■集電ブラシ
集電ブラシは0.4ミリ燐青銅線を曲げて作ります。床板には2ミリのプラビスを使って取り付けるのが簡単です。また安定した走行のためにはやはりすべての動輪から集電するようにするのがよいと思います。第一動輪への集電ブラシは、車体に当たってショートしやすいので絶縁チューブをかぶせておくとよいと思います。モーターの片方のラグと絶縁ブラシ間を細い電線でつなぎ、反対側のラグはモータ取付板にアースします。この時手持ちの車両やパワートラックなどを参考にして、アース側と集電ブラシ側への配線を決めます。なお電気配線する際には、通常のフラックスを使用してはいけません。ペーストを使用するか電子工作用のフラックス入りハンダを使ってください。これまでの工作に問題がなければ、線路に載せてパワーパックのスロットルを回せば、走り出すはずです。

 写真はバルブギアー取付後
 下回りではまだバルブギアーの工作などが残っていますが、これは後にまわして上回りの工作に進みましょう。

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